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医師会ニュース 平成26年10月1日

デング熱なんて怖くない

 デング熱の国内感染が大きな話題になっています。これまでにも東南アジア、中南米などの熱

帯地方を旅行中に感染し、帰国後発症するという輸入感染は毎年報告されていますが、国内での感

染は69年ぶりだそうです。

 

 デング熱はデングウイルスによって起こる病気です。デングウイルスを保有している者の血液

を蚊(ネッタイシマカやヒトスジシマカ)が吸血し、この蚊が非感染者を吸血することで感染が起

こります。必ず蚊を介して感染し、人から人に直接感染することはありません。

 デングウイルスに感染してから発病までの日にち(潜伏期間)は3~7日ですが、全員が発病す

るわけではなく、50~70%の人では発症しない(不顕性感染)とされています。その症状は、突然

の高熱、頭痛、骨関節痛、発疹、嘔気・嘔吐などで、特に発熱はほぼ全例でみられ、一旦解熱して

も再度発熱する(二峰性)ことがあります。約半数には発疹もみられます。ほとんどのデング熱は

1週間ほどで治りますが、1~5%は重症化してデング出血熱といわれる状態になり、出血しやす

くなります。さらに血圧が低下してショック状態になると重症デングと呼ばれます。放置された

重症デングの致死率は10~20%といわれていますが、日本国内では適切な治療により、デング熱患

者556例(2006年から2010年の間)での死亡者はいませんでした。

 蚊に刺された場所と症状からデング熱を疑ったとき、医療機関を受診していただきますが、一

般の医療機関では検査ができません。経過や症状などから医療機関もデング熱を疑った場合は

保健所を通じて血液を保健衛生研究所に送り確定診断をします。しかし、デングウイルスに直接

効く抗ウイルス薬はなく、治療は症状にあわせて点滴による水分補給と解熱剤による解熱など

を行います。

 

 デング熱ワクチンは現在のところまだ開発されておりません。一番の予防法は、蚊に刺されな

いようにすることです。蚊の居そうなところでは長袖、長ズボンを着用する、虫除けスプレーを使

用するなどの対策を心がけてください。また、蚊を発生させないため雨水などが溜まった容器な

どを放置せず、観葉植物などの受け皿などにも水を溜めないようにしましょう。なお、日本で

の主な媒介蚊はヒトスジシマカであるとされていますが、その活動は5月中旬から10月下旬とさ

れており、11月にはデング熱も終息すると思われます。

 以上、デング熱は日本人にとっては未知の病気で、マスコミなどによる国内感染増加のニュース

などを繰り返し聞かされると不安を掻き立てられますが、病気そのものは重いものではなく、人

から人へ直接うつることはなく、間もなく終息すると考えられます。

 騒がず、落ち着いて対応してください。

 

(春日 宏友先生 平成26年10月1日)

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