記録的な猛暑が去ったとたん、朝晩冷え込むようになりました。これからの季節は血圧が高くなり、脳卒中などの悪循環疾患が増える季節です。脳卒中は国内死因の第3位(年間約13万人)を占めています。運良く一命を取り留めても、約4割の方は後遺症を残し介護が必要になります。患者数は約270万人と言われていますが、今後20年程度はさらに増えることが予想されています。ところで、脳卒中には脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などがありますが、主に今回は脳卒中の中で最も多い脳梗塞についてお話します。
脳梗塞予防にまず大切なことは血圧と血糖のコントロールです。特に高血圧は脳梗塞の最大の危険因子で、収縮期血圧(上の方の血圧)が10mmHg上がると男性では約20%、女性では約15%、脳梗塞になり死亡する危険度が高くなるとされています。血圧の高い人は塩分制限、内服薬治療などで血圧を130/80未満にしておきましょう。また、糖尿病の人はそうでもない人の4.37倍も脳梗塞になりやすいのですが、ヘモグロビンA1Cの値が1%下がるごとにその危険度は15%低下する、と言われていますのでしっかりとコントロールをしましょう。さらには脂質異常・肥満も加えてのメタボリック症候群や心臓疾患(なかでも心房細動)なども脳梗塞の原因になります。これらの病気をお持ちの方は放置せずに必ず治療を受けておきましょう。喫煙や暴飲も危険因子になりますので、禁煙・節酒を心掛けましょう。
最後に、意識がないような重症ならば当然ですが、比較的軽症でも救急車を呼ぶときに脳卒中を疑った方がよいかどうかを簡単に見分ける方法があります(表)。これらの3項目のうち、どれかひとつでも「異常」であれば脳卒中の可能性が高いと思われますので、すぐにかかりつけ医に連絡し指示を仰ぐか、救急車を呼んで適切な病院に搬送してもらいましょう。夜中であっても朝まで待たずに行動しましょう。早期診断、早期治療が肝心です。
表 シンシナティー病院前脳卒中スケール(CPSS)
顔面の下垂 歯を見せるように、あるいは笑顔を指示
正常 両側が等しく動く
異常 どちらか片側がもう一方のように動かない
上肢の動揺 目を閉じさせ、10秒間上肢をまっすぐに伸ばすよう指示
正常 左右とも同じように上がる、または左右ともまったく上がらない*
異常 片方が上がらないか、もう一方と比べてフラフラと下がる
言語 「瑠璃(るり)も玻璃(はり)も照らせば光る」(例)を繰返すよう指示
正常 正しい言葉を明瞭に話す
異常 不明瞭な言葉、間違った言葉、またはまったく話せない
(春日 宏友先生 平成22年10月1日)